上野理一(1848-1919)

 京都国立博物館の中国書画コレクションの中核をなすのが、朝日新聞創刊期の経営者・上野理一氏(1848-1919、号は有竹)が収集し、子息の精一氏が昭和35年(1960)に寄贈された上野コレクションです。

 上野理一氏は早くから茶道をとおして古美術品に関心を寄せ、明治22年(1889)には朝日の共同経営者の村山龍平氏と近代日本初の東洋古美術研究誌『國華』を創刊しました。日本美術では、東京帝国大学教授で、國華社主宰の瀧精一氏(1873-1945)、 中国美術では、朝日新聞社記者を経て京都帝国大学教授となった内藤湖南氏(1866-1934)らの助言を得て名品収集の幅を拡げました。とくに晩年は中国書画に傾倒し、湖南氏の仲介により羅振玉氏から宋拓の《聖教序》を譲り受け、さらには当時唐拓といわれた王羲之《十七帖》を入手し、ついで、北宋以後清初に至る代表的大家の作品を順次購蔵しました。 元時代の郭畀《幽篁枯木図》や、清時代初期の王原祁《倣元四大家山水図》、惲寿平《花隖夕陽図》などはコレクションを代表する名品となっています。

王羲之 《十七帖》 東晋