藤井善助(1873-1943)

 政財界に活躍した四代藤井善助氏(1873-1943)は、近江商人の血をひく人で、若き日、上海の東亜同文書院に留学し、その間、中国文物が主として欧米に流出するのに眼がとまりました。帰国後、35歳で衆議院議員となり、人生の師であり友でもある犬養毅氏に出会い、その薫陶により、祖先文物と言える文物を日本にとどめたいと内藤湖南氏や長尾雨山氏に教えを乞い収集を始めました。また、実業界で役員を共にした阿部房次郎氏は、親友であり、よき相談相手でもありました。犬養毅氏は、友情が厚く、内藤湖南氏の病気、山本悌二郎氏の事業についての協力依頼をし、藤井善助氏は、それらを心よく引き受けました。

 善助氏は、美術の人心に及ぼす影響が大きいことを考え、収集家の深蔵の慣習を改め、公開して人心を美化し、学術研究にも役立ちたいと願いました。氏は、心から中国文化を愛したコレクターです。

藤井斉成会有鄰館

黄庭堅 《李太白憶旧遊詩》 北宋

郎世寧・唐岱 《春郊閲駿図》 清