矢代幸雄(1890-1975)

 矢代幸雄氏(1890-1975)は美術史家で、大和文華館の所蔵品の核となる数多くの名品を収集し、初代館長を務めました。 横浜に生まれ、東京帝国大学英文科を卒業、大正10年(1921)から4年間欧州留学し、イタリアでバーナード・ベレンソンに師事します。 美術研究書で部分図を多用する方法を初めて行い、英文著書『サンドロ・ボッティチェリ』(1925年、ロンドン)を出版、高い評価を得ました。帰国後は専ら東洋美術の研究に携わり、東京美術学校教授、美術研究所(東京文化財研究所)所長などを歴任し、 研究所の役割として東洋美術総目録の編輯を第一に掲げてこれを進めました。

 矢代氏の東洋美術への深い造詣を育む端緒を開いたのは、二十代で出会った原三渓氏(富太郎)のコレクションの鑑賞と三溪氏を取り巻く文化サークルでした。矢代氏収集の中国絵画で原三渓旧蔵品には伝趙令穣《秋塘図》、伝毛益《蜀葵遊猫図》《萱草遊狗図》、益田鈍翁(孝)旧蔵品には李迪《雪中帰牧図》があります。

李迪 《雪中帰牧図》 南宋 (国宝)

(伝)毛益 《蜀葵遊猫図》 南宋 (重要文化財)