須磨弥吉郎(1892-1970)

 昭和初期に中国とスペインに駐在した外交官・須磨弥吉郎氏(1892-1970、号は昇龍山人)は、美術愛好家としても知られ、それぞれの任地で膨大なコレクションを形成しました。氏と京都国立博物館のつながりは、昭和12年(1937)、中国赴任を終えるに当たり、そのコレクションの一部を一時、「恩賜京都博物館」時代の京都国立博物館に寄託したことから始まります。スペイン絵画のコレクションは現在、長崎県美術館にありますが、中国美術は、平成11年度(1999)と平成12年度以降、子息の未千秋氏が順次、京都国立博物館に寄贈されました。



 須磨弥吉郎氏収集の中国美術品では、清時代初期の石濤《黄山図冊》のほか、とくに近代絵画が充実しており、斉白石や高剣父、黄賓虹ら当時の一流画家の優品が数多く含まれています。これは氏が中国在勤中に彼の地の要人たちと、愛好する書画を通して胸襟を開いたつきあいを持ったことによります。また、彼らとの外交折衝の場にしばしば書画展観場を利用しており、美術を愛する外交官としてユニークな人物でもありました。第二次世界大戦中はスペインに駐在し、戦後は衆議院議員などをつとめました。 

石濤 《黄山図冊》 清

斉白石 《宋法山水図》 近代