橋本末吉(1902-1991)

 橋本コレクションは、橋本末吉氏(1902-1991)が一代で収集した約800点に及ぶ中国書画です。氏は慶應義塾大学を卒業後、大蔵省に入省、後、実業界に転身しました。仕事に励むかたわら古美術品の収集に努め、特に篆刻家桑名鉄城(1864-1938)の旧蔵品を入手してからは、中国絵画の奥深さに魅せられていったといいます。コレクションの中核となっているのは、石鋭《探花図巻》(重要文化財)をはじめとする明代宮廷画家・浙派の作品、呉彬《渓山絶塵図》など明末清初の奇想派・個性派の作品、江戸から明治にかけて来日した中国人画家の作品、そして、呉昌碩や海上派などの近代中国画家の作品です。これらは、橋本氏が収集を行なっていた当時は必ずしも高く評価されていなかった作品群ですが、現在は明代以降の中国絵画史研究上、欠かすことのできないものとなっており、氏の優れた鑑識眼を物語っています。また、橋本氏は、中国絵画史研究の発展を願って自身のコレクションを国内外の学者に広く公開した、研究の支援者としても知られていました。

 コレクションは、現在、東京国立博物館に寄託され、折々に展示されています。

石鋭 《探花図巻》 明 (重要文化財)

呉彬 《渓山絶塵図》 明