黒川幸七(二代、1871-1938)

 二代黒川幸七氏(1871-1938)は、若い頃から家業の証券業には関心が薄く、家督を継いだあとも、事業は番頭にまかせ、自らは御影(現神戸市)に別荘飛香館を築き、書画、囲碁、盆栽、煎茶、そして古美術の収集に情熱をそそぎました。内藤湖南氏や羅振玉氏、犬養毅氏などの当時の文化人と交流を結び、中国書画、青銅器、古鏡、刀剣、刀装具、古銭等を幅広く収集しました。また、仏教に帰依し、江戸時代の高僧・慈雲尊者の遺墨も集めています。

 中国書画は、南宗画の祖董源の伝称をもつ《寒林重汀図》が世界的に知られており、明清時代の作品にも、 董其昌と同郷の松江派画家や、揚州八怪系の作品に優品が目立ちます。書では、特に清朝帖学派に佳作が並びます。収集方針については内藤湖南氏に感化を受け、その没後は門下の梅原末治氏が考古学の分野から助言に当たりました。その縁から、晩年には京都大学人文科学研究所の前身である東方文化学院京都研究所に、殷代の甲骨および龍門石刻拓本を寄贈しています。

黒川古文化研究所

王羲之 《集王聖教序》 東晋

(伝)董源 《寒林重汀図》 五代 (重要文化財)